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(コラム)バイオディーゼル燃料への思い

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image2004年のある日のこと、奈良新聞に「菜種油で車が走る」「地域エネルギーの自立」という見出しが躍っていました。奈良でも始まっている「菜の花プロジェクト」を紹介する記事でした。
わたしたちは、交通手段や宅配便など、毎日のようにクルマの恩恵を受けていますが、それを動かすエネルギーの原料は、遥か彼方から膨大な量を船便で取り寄せています。日本にはない資源、石油。しかもいずれ枯渇するといいます。オイルショックという言葉もあったように、いつなんどき日本に入ってこなくなってもおかしくないのではないか。大半を石油に頼るというのは、エラくリスキーなことなんじゃないかと漠然とですが、日頃から思っていました。
また、「地域エネルギーの自立」 とあるのは燃料のことだけではなく、電気のこともだよね!と直観しました。電気も国内とはいえ、巨大な送電線で結構な距離から送られてくる。いつか取り返しのつかないような惨事で電気が家や会社に来なくなりはしないか?と心のどこかで危惧してました。
だから、「こんな取り組みがあったんだ」と、見出しと記者の思いの伝わってくる熱い記事は衝撃的で、心動かされました。
その後、奈良での菜の花プロジェクトの先駆者の方に会う機会あり、やり方や普及のための働きかけ方など、いろいろ教えていただきました。また奈良県環境県民フォーラム自然環境分科会に入り、菜の花栽培に参加しました。
そして2006年、香川県高松市で開催された「全国菜の花サミット」に行き、リレートークの中でバイオディーゼル燃料を作り、走行実験もしたという実践者の話を聞き、再び大きく心を動かされました。
当時、静岡県トラック協会 環境対策委員長だった 西村登さんとの出会いです。
特に、栽培したナタネの種から搾った油をバイオディーゼル燃料に精製、業務用トラックで走行実験すると、ディーゼルカー特有の微振動がなくなったという話にはものすごくインパクトがありました。
感動したとご挨拶すると、後日すぐに、ご本人が講演した時のと、菅原文太さんのラジオ番組に出演した時の2本の録音を送ってくださいました。
聞いてみると、取り組みのきっかけは、当時の石原東京都知事が「東京の大気汚染の原因はこれだ!」とトラックの排ガスを手にしながらの発言への世の中の反響。静岡県の輸送事業者が、東京への荷物輸送の大きなウエイトを占めているため、協会の環境担当者として「我々が物流の大動脈である」「大気汚染の加害者である」という両面を思いながら、バッシングに向き合われます。早朝から、解決のためのありとあらゆる情報を収集する毎日。ある時ラジオから「ドイツでは菜種油から精製した燃料で当たり前のように車を走らせている。石油依存からの脱却が国策として進められた結果だ」という内容を耳にされます。それから、昔にナタネを生産されていた方を探し、訪ね、栽培方法など教えを乞われます。そして農家とのナタネの生産契約などさまざまなプロセスを経て前述のトラック協会としてのタンクローリーでのバイオディーゼル燃料による走行実験に至った、ということが語られていました。
image苦境から深く学ばれたこと、「わたしのような、バカ者、ヨソ者、変わり者が世の中を変えていける」との録音テープから流れてくるメッセージに再び心打たれ、わたしとしても何かせずにはおられなくなりました。
まず奈良県トラック協会に「何か一緒にやれることはありませんか」と押しかけて行きました。
次に知り合いのツテを頼って、自分のフィールドとして一反弱の休耕田を借りてナタネ栽培を始めました。
その後、所属NPOに「菜の花プロジェクト」を事業の一つに入れてもらい、農業高校の先生や他団体の力を借りながら栽培を継続。
ただ、反収自体は伸び悩み、油も大して搾れない状況が続きました。
また、ガソリン代替燃料の原料であるトウモロコシ、サトウキビが食用と争奪する事態となっているとの世界状況が伝えられる中では、次第にバージン油での燃料精製ということは思うことも口にすることも封印していきました。
けれど、奈良県として食用としての統一ブランドもでき、全国菜の花サミットを開催するとなってからは、食用でない搾油可能な品種での燃料精製ならいけるんじゃないか、という思いがかえって強く募ってきました。
今年度、全国菜の花サミットの奈良での開催も無事成功して、毎年参加している「アースデイ奈良」も終わった直後、所属しているNPOほっとねっとに、ならコープから助成金申請していた事業が採択されたと嬉しい通知が届きました。
研究テーマは「エネルギーの自給を災害時対策と共に考える」。調査内容は2つ。
・移動可能な小型ソーラーと蓄電池の被災時も念頭においた有効利用の実証実験
・食用でない植物性油によるバイオディーゼル燃料化と被災時も念頭においた走行など実証実
2016年7月21日、奈良市内のある給油所での軽油はℓあたり88円。ℓあたりの精製コストのみでも100円のバイオディーゼル燃料の市場化は非常に厳しいと思えます。
だからといって、例えばディーゼルカーの燃料は石油由来の軽油だけ、というのでは地域として、国として余りにも心もとないことだと思います。
東日本大震災で、燃料調達が厳しく人の避難も物資の輸送もままならなかった時、岩手の市民グループの廃油回収→バイオディーゼル燃料精製の取り組みがあったからこそ車を動かせたと聞きました。
非常時の備えという観点からも細々と軽油代替燃料の確保は必要なんじゃないかと考えます。
価格競争に勝つことだけが良いことなのかもどうかも含めてゼロから、いやマイナスから考えていきたいと思います。
ちなみに、食用油のほうは国内の自給率を1%にすることが、当面の目標。
であるならば、エネルギー(燃料)の自給率も1%を目指してみるということでいかがでしょうか。
トラックなど100台の車のうち、1台が国産由来の燃料で走る。
それが最低限の非常時対策になると、わたしは考えています。
1%というのは、結構大きく、大事な積み上げだと最近特に感じています。
出会って以来、惜しみなく情報提供、アドバイスいただいた静岡県トラック協会の西村さん、
自前のトラクターで借り上げたばかりの荒れた休耕田を耕してくださった、奈良県トラック協会の専務だった北川さん、ご両人とも亡き今、廃油回収やナタネ栽培を大規模化したスケールメリットの中でしか思いの実現は叶わないと諦めるのではなく、1滴ずつ希望を増やしていって、ご恩に報いたいと思います。
当方では、今年度の前述したNPOとの調査研究の協働を始めとして、1%から始める電力自給の市場化、つまりミニソーラー&蓄電池や小規模ソーラーシステムや国産(県産)食用油を売りながら、できることから1%の燃料自給を目指すことに貢献したいと考えています。

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(バージン油のバイオディーゼル燃料 普及、資金量によりできること)
5000円 ・・・ 食用品種以外の、いわゆる野に咲く菜の花の種 刈り取り、電動機による搾油
(従事者1人-数人規模)
50000円 ・・・ 上記の試験的刈り取り&搾油と賞味期限切れ未利用食用油 100Lをバイオディーゼル燃料に精製と農機具またはトラックでの短距離 走行実験 (2016年度、NPOの助成事業に協働中) (従事者数人規模)
500000円・・・一定規模の菜の花栽培と刈り取り、搾油と賞味期限切れ未利用食用油の小さな回収拠点設置。1000Lのバイオディーゼル燃料精製。トラックなど業務用ディーゼルカーによる短距離走行実験。ディーゼル発電機と車用に分散備蓄、または販売。
(従事者10人-30人規模)
5000000円・・・資源作物としての菜の花栽培の規模拡大、設置型中規模搾油機購入・稼働。
賞味期限切れバージン油回収の充実。中規模のディーゼル発電機購入、イベント時などに啓発的利用。精製したバイオディーゼル燃料の備蓄集約化または販売拡大(有資格管理者の常駐)。走行実験など検証と品質向上のシステム化。
(従事者50人規模)
50000000円・・・資源作物としての菜の花栽培の規模拡大(農作業専従者の確保)。バイオディーゼル燃料プラント購入。バイオディーゼル燃料の店舗的販売の確立。それによる環境保全、福祉の充実など地域活性の実現。
(従事者 完全雇用含め20人規模)